こんにちは、今回は水平剛性や水平変位について詳しく解説していきたいと思います。
水平剛性ってなに?って人や、水平剛性や水平変位の問題の解き方がわからないよっていう方向けに解説していきます。
水平剛性とは
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水平剛性とは水平力に対する部材の固さのことです。
水平剛性が大きい、つまり固い部材は地震などに対して耐えることができるので揺れにくいのです。
このように水平剛性は固さを表すとともに建物の揺れにくさも示しているのです。
こんにゃくとか豆腐は柔らかいから地震が来た時にたくさん揺れちゃうね。
構造力学を理解していくにはこんなイメージも大事です!
建物の揺れ(水平変位) には、地震の大きさや水平剛性の大きさが関係しており、これを式で表すと
![](https://0gakublog.com/wp-content/uploads/2021/03/image87.png)
となります。
地震力が大きいほど変位が大きく、水平剛性が大きいほど水平変位が小さくなることがわかります。
部材や建物の水平剛性が分かれば、それに対応する建物の水平変位がわかるんだね。でもそもそも水平剛性ってどうやって求めるの?
水平剛性の求め方
では次に水平剛性の求め方を見ていきましょう。
まずはいきなり柱の水平剛性を考える前に、簡単な片持ち梁の水平剛性を考えてみましょう。
水平剛性と変位の関係は密接ですから、片持ち梁の水平剛性はたわみの公式を変形することで求めることができます。
たわみとは?【覚えるべき4つの公式を厳選&公式の中身を解説】
片持ち梁のたわみの公式は
δ=PL3/3EI
これをさきほどの水平変位を求める式δ=P/Kに当てはめて考えてみましょう。
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したがって
K=3EI/L3
となるのです。水平剛性はヤング係数と断面2次モーメントとスパンによって決まるということがわかりますね。
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この水平剛性の公式は、片持ち梁の公式がもとになっているため、柱に応用して考える場合には90度回転して考える必要があります
また、片持ち梁とは別に柱の支点条件を考慮する必要があるので次に柱の支点条件について見ていきましょう。
水平剛性の問題での柱の支点の条件は2種類あります。
- ピン支点
- 固定端
2種類の支点条件のときには、それぞれ変位の仕方が異なります。水平剛性がどのように変わるか詳しく見ていきましょう。
ピン支点
ピン支点の場合は下図のように片持ち梁の時と同様の変形が想定されるので、片持ち梁を90度回転させただけと考えることで、片持ち梁と同じ水平剛性の公式で求めることができます。
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K=3EI/h3
固定端
固定端の場合、変形は片持ち梁の場合と異なるので考えてみましょう。
固定端では以下のように変形します。
![](https://0gakublog.com/wp-content/uploads/2021/03/image91.png)
ここで注目するのが、固定端の場合柱全体の変位はh/2の片持ち梁2つ分の変形をあわせた変位と同様であるとことです。
片持ち梁のたわみの公式にh/2を代入すると、
δ=P(h/2)3/3EI × 2 (h/2の梁が2つ分)
δ=Ph3/12EI となり、δ=P/Kに対応して考えると、
K=12EI/h3
となります。
このように固定端の場合の水平剛性の公式を導くことが出来ました。
固定端の水平剛性はピン支点の場合と比較して4倍固いということがわかりますね。
また、固定端の水平剛性の公式を覚えるのが大変な場合はピン支点の公式から求められることを覚えておきましょう。
例題
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水平剛性と水平変位について理解が深まったところで例題を2つ解いてみましょう。
例題1
下図のような水平力Pが作用する骨組みにおいてそれぞれの柱の水平力の分担比を求めなさい。ただし3本の柱は全て等質等断面の弾性部材とし、梁は剛体とする。
![](https://0gakublog.com/wp-content/uploads/2021/03/image92.png)
解答の手順
まず解答の手順を考えて行きましょう。
水平力の分担比を求めるには、各部材の水平剛性の比を求める事によってわかります。
各部材の水平剛性の比=水平力の分担比になります。
水平剛性の大きい柱、つまり強くて固い柱ほど地震力をたくさん負担してくれるってことだね!
計算
水平剛性は先ほど学習した公式を用いて求めて行けば良いので実際に計算していきましょう。
柱Aは固定端なので、K=12EI/h3より
K=12EI/(2h)3
K=12EI/8h3
K=3EI/2h3
柱Bは固定端なので、K=12EI/h3より
そのまま、K=12EI/h3
柱Cはピン支点なので、K=3EI/h3より
そのまま、K=3EI/h3 となり、係数だけを比較すると
A:B:C=3/2:12:3
したがってA:B:C=1:8:2となります。
裏技テクニック
このように公式に数値を代入すれば、水平剛性は求めることができます。
しかし、わざわざ公式に代入して計算する手間がめんどくさいですよね?
そこで一級建築士試験では水平剛性は部材の長さと支点条件の違いとEIの係数の違いでしか出題されないことを利用します。
公式に着目してみましょう。
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スパンは3乗ですから部材の長さが2倍になると水平剛性は1/8になるということがわかりますね。
次に支点条件ですが、ピン支点と固定端では固定端が4倍硬いということを先ほど学習しましたね。
次はEとIです。Iは本来断面2次モーメントで部材断面から計算して求めるものですが、このタイプの問題ではそこまで計算させられることはなく、出たとしても部材AがEI、部材Bが2EI程度の違いしか出題されません。
したがってスパンと支点条件とEIの係数だけ比較することで簡単に計算できてしまうのです。
さきほどの問題で考えてみましょう。この問題ではEIは全て等しいので、スパンと支点条件だけ比較していきましょう。
部材Aの水平剛性を基準として考えて、1とします。
部材AとBを比較すると、部材Bは支点条件は同じでスパン長さだけ異なります。
スパン長が2倍異なる時には水平剛性も8倍異なるので、
部材Bの水平剛性は8となります。
次に部材BとCを比較してみましょう。
部材BとCはスパン長は同じで支点条件が異なります。支点条件は固定端がピン支点より4倍硬いので、
部材Cの水平剛性は2となります。
したがってA:B:C=1:8:2となります。
この方法なら公式の内容さえわかっていれば暗算でもできそうだね〜
例題2
下図のような水平力が作業する構造物において各層の変位が等しくなるとき、水平剛性K1、K2、K3の比を求めなさい。ただし、梁は剛とし、柱の伸縮はないものとする。
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解答の手順
まず解答の手順を考えて行きましょう。
この問題でポイントになるのは、問題文中に書いてある各層の変位が等しくなるということです。
一見今回求めたい水平剛性には関係なさそうに見えますが、
水平変位と水平剛性には密接な関係があるので、水平変位の公式から水平剛性にアプローチするという考え方で問題を解いて行くことが出来るのです。
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1階、2階、3階の変位をそれぞれδ1、δ2、δ3とすると
δ1=δ2=δ3が成り立ちます。
したがって、P1/K1=P2/K2=P3/K3という式から水平剛性の比K1:K2:K3を求めればいいのです。
なるほど〜。てことは1階、2階、3階にはそれぞれ2P、3P、4Pの力が働いているわけだから、2P/K1=3P/K2=4P/K3を計算すればいいんだね!
とっても惜しいけど、それだと地震力の考え方がダメなんだ。地震力の考え方をしっかりと見ていこう!
地震の力を考えたときに、屋根がスレートと折板で出来た屋根の軽い建物と、瓦とかで出来ている屋根の重い建物だと屋根の重い建物の方が建物全体がたくさん揺れる感じがしますよね?
これは地震力が上の階から柱を伝わって、地面に流れていくからなのです。
つまり3階に掛かる地震力は2階と1階にも加わってくるし、2階に掛かる地震力は1階にも流れていきます。
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Point
地震力はその階より上階の地震力の合計になる
計算
このことを踏まえてP1=9P、P2=5P、P3=2Pとして計算すると
δ1=δ2=δ3より、
9P/K1=5P/K2=2P/K3 となります。
この等式が成り立つためには、
K1=9、K2=5、K3=2 を代入すれば良いので、
したがって、K1:K2:K3=9:5:2 となる。
裏技テクニック
この問題でも正攻法ではなく楽して解く方法を考えて行きましょう。
9P/K1=5P/K2=2P/K3 までは公式を用いて求めることが出来るけどそこからK1:K2:K3=9:5:2とするところでつまづいちゃうんだ
という人が数学が苦手な人の中に特に多いと思います。
そこでこの0学ブログでは、
地震力の大きさの比=水平剛性の比
になることを利用して答えを求めます。
まずは各階の地震力を求めましょう。
地震力は上階から伝わってくることに注意して1階が9P、2階が5P、3階が2Pということがわかりました。
地震力の大きさの比=水平剛性の比 と考えると、
K1:K2:K3=9:5:2となります。
地震力の9、5、2という数字が出てきたら、水平剛性とか考えるまでもなくそれが答えという考え方です。
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公式を見ると、PとKには同じ9、5、2が入らないとδ1=δ2=δ3が成り立たないのでよく考えてみると地震力の大きさの比=水平剛性の比になるのは当たり前なんだねー
どうしても構造力学が苦手、実際に問題を解きながら勉強したいという人は以下の書籍を参考にするのもおすすめです。
まとめ
水平剛性とは
- 水平剛性は部材の硬さを表し、水平変位と密接な関係にある(δ=P/K)
- 水平剛性K=3EI/h3 (ピン支点)
- 水平剛性K=12EI/h3 (固定端)
スパン長、固定条件の異なる1層ラーメン
- 各部材の水平剛性の比=水平力の分担比を考えて水平力の分担比を求める
- スパンと支点条件とEIの係数だけで比較すると早い
各層の変位が等しい3層ラーメン
- δ1=δ2=δ3が成り立つことから水平剛性の比K1:K2:K3を求める
- 地震力はその階より上階の地震力の合計になる
- 地震力の大きさの比=水平剛性の比
いかがでしたでしょうか?今回は水平剛性や水平変位について解説しました。一級建築士の試験だけできれば良いという方は裏技テクニックなどを用いることで時短プラス計算ミスも減ってくるので、おすすめです。今回も最後までご覧いただきありがとうございましたー!
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